生命の私物化問題

「生命特許」多国籍企業による生命の私物化は認められるのか(ショーン・マクドナー著)#2
本来、工業製品の発明に対して与えられていた特許が、、対象を拡大して生命にまで拡がっています。生命が持つ固有の価値は無視され、他の工業製品と同列で扱われるようになりました。(はじめに)

この問題に対してかってはどう対応してきたか
ごく最近まで、特許に関する法律や制度は国によって異なっていました。そして、公私の利益をめぐる論争では、発明者または企業の経済的利益よりも、公共の利益の側に振り子が振れるケースが多かったのです。たとえば、第三世界諸国の多くは、食品や医薬品など生活に必要な製品については、特許を認めてきませんでした。(p.6)
1928年イギリスでペニシリンを発明した時も、イギリス政府は、全人類にとってこの薬が重要であることを考慮し、特許を求めないという判断を下しています。(p.6)
 国ごとに異なっていた特許法は、1994年に終結したガット(GATT)・ウルグアイ・ラウンドにおいて、初めて、世界共通の国際法へとかたちを変えることになりました。自国内の企業からの圧力に押されたアメリカ政府など北側先進国が、世界レベルで知的財産権の確立を主張したからです。ここで私たちが念頭に置いておきたいのは、アメリカが輸出で得ている利益の70%が、エイズ治療のための医薬品やウォルト・ディズニー、マクドナルド、マイクロソフトまで含め、すべて特許を取得した製品に関連するものであるという点です。ガットは1995年に設立されたWTO(世界貿易機関)に発展、解消されました。
 こうして北側先進国の強い要請の結果生まれたWTOのトリプス(TRIPS)協定(知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)はすべてのガット調印国に対し、植物、動物、微生物、遺伝子を含む生物資源についての知的所有権に関する基準の採用を義務づけました。そして、当初は無生物と製法のみととらえられていた特許の適用対象物は、その後徐々にかたちを変え、範囲を拡大していきました。(p.7)

このことはどのような弊害をもたらしたか
 特許制度は、企業がある製品について独占権を持ち、不当に高価な値段を付けることを可能にします。これは、医薬品や治療法などが、貧しい人々にはとうてい手の届かないものになってしまうことを意味します。欧米諸国による製薬業界の独占状態を批判する第三世界評論家らは、これらの企業は利益が見込めるバイアグラなどのライフスタイル・ドラッグの研究開発には巨額の投資をしているが、貧困に苦しんでいる人々の命に関わるエイズやマラリア、結核などの疾病は見ぬふりをしている、と非難しています。(p.7)

インド人科学者であり運動家のヴァンダナ・シヴァは次のように言っている。
「みなが共有する知識に泉は、今日存在する幅広い農作物およびび薬草の多様性に、計り知れないほどの貢献をしてきました。このため、資源または知識に対する個人の所有権という考え方は、現地の人々にとってはいまだに異質なものです。それは間違いなく知識の強奪を増幅させ、現地住民と生物多様性の保護の将来に深刻な影響を与えることになるでしょう」
広瀬珠子訳・天笠啓祐監修 LIFE Japnanブックレット
2003年6月発行聖コロンバン会