生物への影響 1100 環境と生命(1)/綿貫礼子講師  K03951 "神学セミナー
1990.10.23"   "環境問題は体制を越えて起こってくる。人間社会にすぐに影響する。人間だけが中心ではない。生態系の一員である人間、人間はそれらによって活かされている。
環境問題は「南北問題」と深い関係がある。フェミニズムと環境問題。女性は「生命の連鎖」の中で直観的に危機を感じることが出来る。「いのち」の問題は女性の方が直観出来る。連鎖を感じさせない「命」は間尺に合わない。
DDT問題について書かれたレイチェル・カーソン著「沈黙の春」(302)春になっても生命が生まれない自然。石牟礼道子著「苦海峡」などは示唆に富む。日本が先駆的に出会った環境問題。
日本だけが環境問題について関心が薄い。最近、チェルノブイリ以後、ソ連の環境問題に対しての関心が高まっている。
今までの生化学は過去の研究が主であったが、今日、将来世代(unborn age)の研究が問われている。私はこの観点から「胎児からの黙示」(世界書房)を書いた。「生」と「死」の問題。発ガン因子を持つ遺伝子の存在など、「死」も今日ナチュラルな死が無くなっている。広島・長崎の原爆で二世の癌発生がここ数年頻発している。しかし、二世、三世への放射能の影響は今日まだよくわかっていない。それ故、原爆との因果関係が説明されにくく、世の中の理解が得られにくい。長崎の被爆二世のお母さんが書いた「終わりはいつですか」はそういう問題の示唆に富む。
ダイオキシンは戦争時「化学兵器」(枯れ葉剤)として使われるが、平和時も「除草剤」として現代世界にふり撒かれている。1960年〜72年頃、ベトナム戦争で頻繁に使われ、この頃子どもであった人たちに、今、癌になる人が多い。
被害はここまでで終わりという、出来るだけ小さくみせる力が働く。隠すパワー。事故が起こった場合人々に知らされないと言うのが通例となっている。しかし、実際には慢性的に症状が起こり、時差を持って被害が及ぶ。チェルノブイリ事故でその地方の癌の発生率が17パーセント増えたという。しかしその因果関係を証明することが出来ない。特に次の世代に残されるものが多い。
自然に対して人間が何をしていいのか。やってはいけないことがある。人間が作り出したものは自然に消化する力がない。私たちの世代より次の世代に濃くなって残されてゆく。原発はエネルギーの問題よりも「生命」の問題である。師の著書「廃炉に向けて」はそのテーマである。
東欧には子どもを生まない運動がある。しかも16、7の子どもたちがそれを言っている。
遺伝子の異常は、確立が高くなるという形で後生に残される。
世界が汚されて、きれいなところがなくなると比較するものがなくなる。
環境破壊問題について、希望を持って語るのはミヒャエル・エンデである。見てしまったら、必ず社会を変えていこうとする人間を信頼している。
原発労働者の健康調査、追跡調査は現在のところされていない。"

生物の多様性を守る 1150 外来生物の侵入を規制しよう 1996年3月号 1 日経サイエンス/百家争鳴 鷲谷いづみ 筑波大学生物科学系助教授、理学博士。専門は植物生態学

" …明治時代以降に我が国に侵入した外国産の生物は、帰化生物と呼ばれる。人類が高速輸送、大量輸送の手段を持つようになってから、世界各地ですさまじい勢いで生物学的侵入が起こり、地球規模で生物相の均質化が進行している。
 
@ヒトが新たに作り出した生育場所への侵入
 都市化によるアスファルト、コンクリート化によるヒートアイランド
 化。(サバンナ、半乾燥地の生育場所の相当)→セアカゴケグモ
A従来からの育成場所への侵入
 ネズミ退治のために離島に導入され大繁殖したイタチ
B競争による在来種との置き換わり
 河原へのオニウシノケグサ、ネズミムギ、オオブタクサ

 …我が国の生物多様性の保全にとって、はるかに深刻で、憂慮すべきであるのはABのタイプである。
"

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